新幹線は10月1日、東海道区間(東京―新大阪)が1964年に世界初の高速鉄道として開業してから60周年を迎えた。時代とともに消えたものや進化をとげたものもある。
東海道新幹線は開業翌年の1965年から、車内に公衆電話を設置。列車番号がわかれば、車外からオペレーターを通じて乗客を呼び出してもらえるサービスもあった。テレホンカードが普及すると、デッキの自動販売機で買える新幹線がデザインされたカードが土産物として人気を集めた。
だが、携帯電話が普及するにつれて利用は激減し、2021年に車内から公衆電話は消えた。代わりに現在は、無料WiFiが利用できる。
スピードアップとともに食事も変化
かつて国鉄の特急列車はほとんどが食堂車を連結していたが、開業時の新幹線は乗車時間が短いことを理由に、軽食を楽しめるビュッフェだけが設けられた。ただ、1975年の博多開業で乗車時間が最長約7時間となったことから食堂車が登場した。富士山を眺めながら食事をしたいとの要望を受け、通路側の壁を改造して窓が設けられた。
その後、スピードアップが進むと、食堂車は2000年に全廃。エキナカやコンビニの充実を背景に、東海道新幹線車内のワゴン販売も23年にサービスを終えた。
ダイヤの進化
東海道新幹線の開業時のダイヤは、1時間あたり「ひかり」1本、「こだま」1本で、1日の運転本数は60本。1992年の「のぞみ」デビュー時は、ひかり8本、こだま3本で、のぞみは早朝と夜間にそれぞれ1往復だけだった。2003年以降はのぞみ主体のダイヤとなり、20年からはのぞみ12、ひかり2、こだま3が基本。1日の運転本数は平均372本にのぼる。
開業時に1日平均約6万人だった輸送人員は、全国各地に新幹線網が広がったことで、コロナ禍前の18年度には約119万人になった。
高級化 2026年度には完全個室も
0系はデビュー時、1等(グリーン車)のイメージカラーは金色で、ゴールデンイエローのシートに出入り口には金の縁取りを施した。2等(普通車)は銀色だった。
バブル期の地価高騰で新幹線通勤のニーズが高まると、東北、上越にオール2階建て車両が登場した。E4系の定員(16両編成時)は、高速鉄道では世界最大級の1634人を誇った。現在は高級化路線が主流だ。E5系やE7・W7系は、航空機のファーストクラス並みのサービスをうたう「グランクラス」を連結。東海道にはグリーン車を超える座席として、2026年度中に完全個室が登場する予定だ。
トイレも進化
鉄道車両のトイレはかつて、レール上に汚物を落とす「垂れ流し式」が主流だったが、0系は汚物用のタンクを初めて導入した。外国人客の利用も見込み、1等車(グリーン車)は開業時から洋式トイレを備えていた。
その後は洋式の割合が増え続け、現在はほぼすべてが洋式に。サスペンションの進化で車内の揺れが小さくなると、温水洗浄機能も備わるようになり、N700SやE5系などは全トイレにこの機能がついている。車イス用トイレの整備も進んでいる。